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目が覚めて時間の感覚が掴めなかった。窓を見るとオレンジに染まっている。キッチンのテーブルでジェイが熱心に書き物をしているのが見えた。
起き出してそのそばに行く。
「まだかかるのか?」
「うん……聞いたことを書き出すのは終わったんだ。今、それを見ながら思い出せるところを書いてる……これが終わったら一緒に見てくれる? 教えてほしいんだ、俺の記憶が抜けているところのこと。この前よりももっと細かく」
「いいよ。何でも手伝う。もう終わりそうか?」
「今日はいい。ここまでにしとく。だから今度蓮がいい時にお願い」
「分かった。疲れたろ? 飯、どうする? しばらく行ってなかったから駅そばのイタリアンに行くか?」
ジェイの顔がぱっと輝いた。
「俺、あそこのパスタ食べたかった! エビとアスパラのヤツ」
「じゃ、行こう。まだ早い時間だからこのビデオ返してまた借りて来ようか」
連休最後の夜だ、のんびり過ごしたい。
「そうする!」
2人は支度をして散歩がてら駅に向かった。
(しばらくは忙しくなるな……池沢と三途か……)
休ませることにしたのは自分だがその穴はやはり痛い。それでもあのプロポーズには心打たれた。あまりにも池沢らしくて、思い出しても笑顔が零れる。
(……そうか、『池沢』が2人になる。ちょっと困ったな……)
それにはきっと悩まされそうだ。
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