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女性の視線をかいくぐって店を出る。会社の4階でやっと落ち着いた。
「あのさ、サプライズの企画俺がやれって課長に言われてさ。なんか知恵あったら貸してもらおうかなと思ったんだ」
「俺も企画担当って課長に言われた」
「あ! 悪い! 俺のせいだな」
「いいよ、俺もチーフと三途さんに何かしたい」
「11日はさ、チーフだけなんだよな。それで朝の始業時前に終わらせたいんだ」
「厳しいね! じゃよく考えないと」
「じゃ、2人で考えよう。助かった!」
「いい知恵出るといいんだけど……」
ちょっと頼りないけれど、チーフの下で働いた者同士。何かしたいのは同じだ。
(ん? そうだ、千枝さんも巻き込んじゃえ!)
花はしっかりその気になった。
時計を見るとまだ5分弱あった。
「あのさ、どうしてる? アイツのこと」
それだけで意味が分かる。
「ノートに書きだしてるんだ、今までのこと。それから覚えてることや思い出したこと。でもばらばらになっちゃうとこがあって……」
「ジェイ、俺も手伝っていいか? 多分、俺が一番見てると思う」
「……いいの?」
「何言ってんだよ! 手伝う、一緒に考えよう……ノートに? パソコンじゃなくて?」
「手書きの方が頭に入るし。そうしたくて」
「そうか……いいよ、俺も書いてみる。それで突き合わせしてみよう。きっとその方がいいよ」
蓮も手伝ってくれる。花も。絶対に抜けた記憶を取り戻したい。きっと辛いだろうと思う。けれど散々この事件と自分の記憶の穴に振り回されてきた。
(もういやだ、繰り返すのは。ちゃんと終わりにしたい)
ジェイの中に、相田と対決するという意識が次第に芽生え始めていた。
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