13.準備

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  「保釈された日の犯行であること、物的証拠と罪を認めたことで有罪は確定だよ。合意の線は押すが、実刑を受けることには違いないんだ」 「それはいいよ、もう。僕はあいつにギャフンと言わせたいんだ。法廷で全てを曝け出させてやる! 最初に僕を誘ったのはアイツなんだぞ! それで僕の人生は狂わされた。僕に抱かれたくてどんな風に感じてたか、喘いでいたか。実況中継をしてやる!」  相田は今、自分の弁護士と話をしている。時間が経ったことで自分の見た事実をとっくに歪めて、それを真実だと思い込んでいた。 「だが向こうも有能な弁護士がついている。3人もだぞ」 「構わない、とにかくどんどん突っついてくれ。あいつは精神的に脆い奴だ。甚振られるのが好きだからすぐに音を上げる。口移しでウィスキーを飲ませた時なんか舌を絡めてきた、縛られてるのに。これは本当さ。あいつは僕の舌を吸ったんだ」 「本当だな? なら状況はかなり有利になる」  この冴木という弁護士はやり手だが、それは決していい意味での『やり手』ではない。 「なぁ、あの話は間違いないんだな? その気があったのに僕をレイプで訴えたら罪になるって話」 「本当だよ。楽しむだけ楽しんで、レイプだ!って騒いで訴えるのは罪になる」 「じゃ、それを頑張ってくれ。どうせ僕は実刑なんだ。あいつを法廷に引きずり出せ。あいつにも罪を償わせてやってくれ」  冴木も景気よく金を払ってくれる両親にいいところを見せたい。例えどれだけの実刑を食らっても息子が満足したと言ってくれれば、自分の収入は安泰だ。 (バカ親にバカ坊ちゃん。相手には気の毒だが罪をおっかぶってもらおう)  とっくに分かっている、相田が嘘をついているということを。そしてそれをそうだと信じ込んでいることも。 (毎度のパターンだ。『俺は悪くない』それでごり押ししてきたんだから。ま、標的になったのが運の尽きってヤツだな)   
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