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「その手はどうした?」
見るとうっすらと左手の甲に血が滲んでいる。まるでカミソリで切られたような痕だ。
「救急箱!!」
「はいっ!」
ただの切り傷。消毒して大きめのバンドエイドを貼る。蓮はゾッとした。ガーゼと包帯で覆われたジェイの姿が蘇る。
「その男、見たことあるか?」
蓮の問いにジェイは首を振った。
「確かに『相田』と言ったのか?」
「うん……」
騒然とする中、ジェイの頭の中でさっきの呟きが何度も聞こえる。
「だって、あいつ捕まってんじゃねぇの!?」
澤田の声に蓮はすぐに西崎に電話をかけた。
「河野です。確認なんですが、相田が保釈ってこと無いですよね?」
『聞いてませんよ。保釈金があまりに高かったのでそのまま拘置されています。何かあったんですか?』
「ジェロームが街の中で手を切られました。その男は『相田』と言ったそうです。ついさっきです」
『怪我の程度は!?』
「切り傷です……カミソリで切られたような」
『なんですって!? 分かりました。これから確認を取ります。ジェロームは病院に連れて行って診断書をもらっておいてください。どんな小さな傷でもそうしてください』
電話を切ってすぐ近くの開いている外来を探した。
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