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それならと、秋野兄弟はやる気満々だが、野村は消極的だ。
「俺、うろつくのはいいけどカミソリはいやだ。名前ちらつかせるってどうやって?」
「俺は肩ぶつけて『相田』って囁いて手を切ってきた。そんなもんでいいだろ。一人だけでやると見つかるからお前たちも呼んだってわけ。アイツに連絡してお前らの小遣いも頼んどいてやるよ。言うこと聞いときゃホイホイ金くれるからな」
ジェイが戦おうとしている相手には、こういう連中もいるのだ。
「傷、痛いか?」
バスルームで蓮が手を取った。
「ちょっとした切り傷だよ、たいしたことない」
「お前、本当に大丈夫か?」
「怖いけど……でも大丈夫だよ。もうそんなこと言ってられない。ちゃんと終わりにしたいから」
「分かった。でも一体誰なんだろうな……」
次の日は昼休みに会社から出ると、視線を感じた。思わず周りを見回すけれど誰がいるわけでもない。前に向き直る時にまた肩が誰かにぶつかる。
咄嗟に身構えたが何も起きなかった。昼を誘った柏木が遅れて出てきた。
「どうした? また何かあったか!?」
「いえ、何も。大丈夫だよ、そんなに心配しなくても」
あまり言いたくない。頼らないとかそういうことじゃない。自分に耐性をつけたかった。花と千枝が来て4人でサプライズ打ち合わせだ。柏木は自分から参加してくれた。
夕食を食べてからビデオ屋に行った。手に取っては棚に戻し、あれこれと物色する。蓮はコンビニに行っている。飲み物を買ったら合流すると言っていた。
棚の反対側から声がした。
「相田さんがよろしくってさ」
行ってみると誰もいなかった。
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