13.準備

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  「どうした?」  遅れてきた蓮が様子が変なジェイに声をかける。 「何も」  短い返事。固く結んだ口。鋭い目つき。 (見たことがある……)  蓮はハッとした。これは自分との愛を確かめる前のジェイだ。そこに氷のようなジェイがいた。  何かがあったのは確かなのだ。けれどそこにいるジェイは、蓮にすら問いかけを許さない顔をしていた。不意に不安に包まれた。 「蓮、ごめん。俺、考えたいことが出来た。ビデオは今度にする。今日は自分のとこで寝るね」  そのままビデオ屋を出ていく後ろ姿に、かける言葉を失っていた。 「相田さん。俺、あんたと戦うから」  その夜は寝ることも無くノートにひたすら思い出す感情を書き続けた。順番などどうでもいい。湧き上がる負の感情をノートにぶつける。洗いざらいの今の思いをぶつける。書いても書いても、止まることなく湧き出る言葉の中に、今まで忘れていたものがちらほら見え始める。 (そうだ、あんた俺をトイレに連れ込んだんだ……俺の首にキスマークをつけた、穢れたものを) (初めて会った時にあんたに肩を掴まれた、思い出すとゾッとする) (俺を殴った、蹴った、犯す気だった) (ウィスキーを……ムカムカする! なんで俺はあの舌を噛み千切らなかったんだよっ!!!!)  相田の嫌がらせは、尽きていたはずのジェイの怜悧な心を蘇らせていた。 (俺がだらしないからこんなことになったんだ。負けて堪るか!)   
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