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「まあ、いいじゃないか。みんな嬉しくって仕方ないんだよ」
「そーですよー。よくぞあの三途さんに手綱つけられましたね!」
「浜田! 人の彼女にケチつけるな!」
一瞬、シンとした。一瞬だ。あっという間にみんなの野次が飛んだ。
「すげぇ! 俺の彼女だって!」
「もう開き直ってる」
「年上女房に太刀打ち出来るんですか?」
「当てつけないでよー」
池沢は昂然とみんなを見回した。
「いいんだよ、お前ら。これからは俺と三途とでお前らを扱くからな!」
「わ! それは勘弁!!」
結局このサプライズはみんなが池沢で遊んだようなイベントになってしまった。ひとしきり騒いで、始業10分前には大慌てで掃除が始まる。
「クラッカー、買い過ぎじゃない? 花!」
「いいから真面目に掃除してください、井上さん。お掃除、好きでしょ?」
「課長、田中さん、まさかこんなもんに手間かけるなんて」
呆れたような顔で池沢は本の表紙を見比べている。
「お前はそういうことに疎いだろうってみんなの親切なんだってさ」
「これ、三途に見せらんないですよ」
「どうかな? 三途のことだから連れてけって騒ぎそうだ」
「田中さん……有り得そうだからやめて」
メールは溜まっているし、何かと言っては三途川のことを引き合いに出されるし、池沢にとってはどうやら散々な一日になってしまったようだった。
だが、からかいながらも自分のことのように喜んでくれるみんなに、池沢は怒鳴りながら感謝していた。
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