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5月7日の相田の公判は流れていた。相田側の弁護士の体調不良。それが理由だった。
「向こうはジェロームを法廷に引きずり出そうと考えているんだと思います。ジェロームが精神的に立ち直る前に叩きたいのだと。公判の予定を変えるのもそのためでしょう。心理的に揺さぶられますからね」
「確かに今はまだ厳しいです。何とかなりませんか?」
「手を尽くしては見ますが……可哀そうだけどやっぱり記憶を全部取り戻さなければ戦えません。今の状態じゃ法廷で争うのは不利ですね」
「公判はいつになりますか?」
「5月18日です。宗田さんに先ほど連絡しました。証人として出ていただきます」
事件は具体的に争われつつある。全てがジェイの記憶にかかっていた。
(今、精神的な揺さぶりをかけられたら……)
「西崎さん、最近ジェロームの周りで起きていることは間違いなく相田が絡んでいると思うんです」
「私もそう思います。彼は脆いですからね、そこを狙っているんじゃないでしょうか。現状では打つ手がありません。犯人が特定できないし、されていることも犯罪と言えるほどじゃない。とにかく気をつけてくださいね」
ジェイに伝えるべきこと。確かめるべきこと。今のジェイが掴めない蓮は、心が揺らいでいた。
――ドン!
肩がぶつかった途端にジェイは相手を掴んでいた。一緒にいた柏木が慌てる。
「ジェイ! どうしたんだ!」
殺気立っているのが伝わってきてジェイをまじまじと見てしまった。花の教えた技の一つなのだろう、相手は動けない。
「あんた、相田さんの知り合い?」
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