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『出発までに花と遊びに行くから』
それは叶わなかった、哲平が忙しすぎて。電話で何度も『ごめんな』と言われた。泣きそうだったけれど頑張って明るい声で答えた。
『心配要らないよ。花さんもいるし』
『花に怒られたよ、ジェイが楽しみにしてるのにって』
『でも哲平さん、必ず帰ってくるから』
『おう! 二人の弟が危なっかしいからな、さっさと帰るから待ってろ』
『うん。強くなって待ってるよ』
「空港にも行けなかったし……」
「そうだな。けど千枝と二人にしてやらなきゃ。分かるだろ?」
「……分かってる。帰ってきたらすぐ結婚するんだって! 男の子たくさん作るんだって言ってたよ」
「想像したくないな、哲平ジュニアがたくさん騒いでるところ」
「楽しそうだよ」
家に入って疲れた顔の蓮のスーツを脱がせていく。背中に思わず抱きついた。
「なんだ、したいのか?」
「ばか……やんないよ、蓮が元気になるまで」
そのまま蓮の背中にくっついていた。
「悪いな、心配かけて」
「俺……ずっと蓮に心配かけてきたよ」
「お前が可愛いから」
背中で赤くなった。もう可愛いなんて言われる時は過ぎたと思っていた。母からしか言われたことの無い言葉。
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