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「ジェイの足を蹴り上げて逃げたのを追いかけたんですが、逃げられました。すみません」
「蹴られただけか? カミソリは?」
「大丈夫です、切られていません」
石尾は何が起きているのか知りたかった。
「なんなんですか? いったいどうなってるんですか?」
ジェイが1人で外に出るのを見たことが無かった。帰りも誰かと一緒だ。事件があったのは知っているが、相手は捕まったと聞いている。
橋田がジェイの足に保冷剤を当てている間に柏木は石尾を離れたところに連れて行った。
「ジェイに起きた事件のことは知ってるんだよな」
何しろ歓迎会でジェイに絡んでいたくらいだ、当然知っていると思っている。
「お前たちにとっちゃ単なる好奇心や噂のタネかもしれない。けどな、ジェイはまだ安全じゃないんだ」
「だって相手、捕まってるじゃないですか。裁判するんでしょ?」
「厄介な相手なんだよ。どうやら誰かを使ってジェイを狙っているらしい」
「狙うって……」
「先週は手を切られた」
「切られた……って、相手は? さっき蹴ってきたっていう人ですか?」
「違うらしい。つまり、複数の人間がジェイを狙っている」
自分たちが思っているよりも大ごとなのを、石尾は初めて知った。
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