513人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
「お前も、もしジェイと一緒に出ることがあったら気をつけてやってほしい。翔にも言っておけ。あいつは命も狙われたんだ、何をされるか分からない」
ジェイに目をやった。いつも穏やかで一つしか年は違わないのに実力差を見せつけられた相手。けれどその実力に自分は歯が立たないことをどこかで悟っていた。
(この人には何をやっても敵わない……)
そんな気持ちがジェイを疎んじる原因になっていた。
「それなのに仕事に来てるんですか……」
「ああ、そういうヤツだからな」
「だって危ないじゃないですか! 外に出るのだって危険じゃないですか!」
「石尾……」
「昼、なんなら俺が買ってきます。会社から出ちゃだめです!」
言ってからハッとした。なぜそんな気持ちになったのか。昼を買ってくる、あの敵わない先輩のために。
改めて思う。疎んじているのは『尊敬』という言葉を持ちたくなかったからだ。素直にそれを認めたくない。
「お前、ちょっと変わったな。ジェイを心配してくれてありがとうな」
柏木に言われて複雑な気持ちになった。
「……いえ、同じチームだし……」
「頼むな、ジェイのこと。あいつは傷つきやすいから」
そう言って柏木はジェイの方に戻って行った。
(俺、どうかしてる)
もう認めざるを得ないのかもしれない。[宗田チーフとジェイ先輩]この二人に抱く憧れと尊敬の気持ちを。
最初のコメントを投稿しよう!