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診察の間、石尾は尾高の隣に座っていた。
「興味本位じゃありません。俺、先輩に起きていることをちゃんと知りたいです。歓迎会の時は……どうかしてたと思います、面談の時も。だから教えてください」
石尾の真面目な態度に、あれこれ考えて尾高は話し始めた。ジェイに起きたこと。みんなが心配していること。
「裁判になっても苦しむってことですか……」
「そうだ。相田は病的にジェイに固執している。だから何を考えてるのか分からないんだ」
「……今、先輩をつけ回してるヤツを捕まえなくちゃならないですよね」
「そうなんだが。さっき中途半端なことになってるから用心されるかもしれない」
診察室からジェイが出てきた。
「ご心配かけてすみません、やっぱり打ち身だけです」
「座ってろ、後のことは俺がやるから」
「ごめんなさい、また迷惑かけちゃって」
「バカだな、お前のせいじゃないだろ?」
自閉症の子どもを持つ尾高は、いつもジェイに親身に接してくれる。病院の付き添いは慣れているからと、窓口に向かった。
「悪かったね、業務中なのに。俺は……いまだにみんなに面倒かけて……」
『みんなはお前を好きだから面倒見るんだ』
そう蓮に言われたけれど、実際にこういう状況になるとやはりその思いが出てしまう。
「でも先輩の面倒見るの、みんな好きそうですよ。そう見えます」
「石尾くん……どうしたの? いつもと違うね」
「俺、ガキっぽいなって思って……すみません、いろいろと反省してます」
ジェイはふっと笑った。
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