14.暴走

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  「そうそう、哲平さんがね!」 (また始まった……)  花は憂鬱だ。よほどインドで哲平と過ごした休みが嬉しかったらしい。千枝は思い出したように唐突に喋り出す。 (初日から順番に聞くのはイヤだ、なんて言わなきゃ良かった……) 明らかに自分のミスだ、最初から聞いていればこの『突発性お喋りの嵐』は無かっただろうと思う。 「ヒンディー語がずい分上達しててね、買い物の時野菜を値切ったのよ!」 「ああ、そういうのならすぐに上達しそう」  あちこちで花の気合の無い返事の仕方にクスクスと笑いが起こる。 (これ、2度目の話のような気がする……) 本気で千枝の健忘症を心配した方がいいんじゃないか、と花は思い始めていた。  池沢は上手いこと、千枝を避けている。一通り哲平の頑張り具合と様子を聞いたら近寄ってこない。みんなそれを倣っている。だから千枝は花を捕まえる。  ジェイは何度でも感動してくれるけど、なぜか千枝の話が始まると誰かがジェイに用を言いつけた。  実際、哲平は所構わず元気のようだった。初日から3日は腹を壊し、絶食した。けれど腹痛より空腹の方が勝ってしまった。  それからはとにかく腹に食事を突っ込んで、あっと言う間に耐性をつけてしまったらしい。  日本食の店もあると、職場の先輩から聞いたが『郷に入らば郷に従えってね』と向こうの料理を食べまくった。   
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