14.暴走

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   当たり前のアドバイスを、それでも花は素直に聞いた。ジェイの裁判だ、自分が台無しにするわけにはいかない。 「ジェイを連れて行くんですか?」 「いえ、次回にします。まだ彼は準備が出来ていないから」  次回にしたとしても、準備など出来るのだろうか…… 「向こうはあなたが刺された事件については触れてこないと思う。あれはこちらの状況も不利にするの。だから気をつけてね。明確に答えられるのは、あなたが目にしたものだけ。聞いた話もだめ。揚げ足を取られるから。相手の質問したことにだけ答えてね。大丈夫?」 「ええ。大丈夫です。他に18日に呼び出されている人はいないんですか?」 「野瀬さんにお願いしました」 「野瀬さんだけ? 他にも何人か……」 「しっかり質問に対応できる人にお願いしてるの」 「課長とか……」 「向こうから喚問したいって連絡が入りました。だから急遽出廷です」  西崎は今回よりも次回の公判の方が心配だ。こちらとしては出したくないが、当然友中医師も呼ばれるだろう。あの頃の不安定なジェイを証言されるのは痛い。記憶があいまいだったことを突かれれば、現在のジェイの証言そのものの信憑性を疑われるだろう。  柏木も証人にしたくない。あの現場が特定されたのは、柏木の元同僚、塚田のお蔭だ。しかし何度訪ねても『証言したくない』の一点張り。 『そんなことがあったということさえ言いたくないんです。俺は充分協力しました。呼ばれてもそんな事実は無かったと答えます』  だから塚田に繋がる柏木を証人にしたくない。 「事件について、河野課長や野瀬さんと話し合うのは避けてくださいね。これは忠告です。過去の裁判でもそれが命取りになったことがずい分あるんです」  きっと二人にも同じことを言ってあるのだろう、二人から公判の話は出て来ない。  
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