14.暴走

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   ジェイはゆっくり歩いた。時々立ち止まったりショーウィンドウを覗いたり。まるで軽い散歩のように。今日がだめなら何度でも外に出るつもりだ。 (きっとどこかで見てるはずだ)  今頃花はミーティングだ。本当はその間自分がチームにいるべきなのだけど。  ジェイは焦れていた。待っているのが苛立たしい。この頃、時に怒りが暴走する時がある。もちろん誰にもそんな顔を見せるつもりは無い。けれど、いったん芽生えた怒りが修まらない。  今の会社に入って以来、『怒り』というものを持ち続けたことが無い。けれどこれは……  母が亡くなった後、持ち続けたあの怒りと同じだ。自分が抗うことのできない状況に対する怒り。戦いたいのに変化を待つしかない怒り。  周りを見回す。どう見ても1人だ。 (へぇ、珍しいじゃん)  芳樹はジェイが1人になることはほとんど無いと聞かされていた。事実、昨日も常に誰かと一緒だった。 『何かアクション起こしとかないとマズい』と兄が言った。だからこうして様子を見ている。 (間違いない、1人だ)  そう思った時にはすぅっとその背後に近づいていた。1メートルくらい空けて、真後ろを歩いた、人が少なくなる場所を探しながら。   
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