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「蓮」
「……なんだ」
「ノート。見てほしい、一緒に」
いつ言うだろうと思っていた。避けるわけにはいかないのに自分の方が逃げようとしている……
「どこにある? バッグの中か?」
「うん」
「……よし。やろう!」
やっと踏ん切りをつけた。ノートを取って来てジェイに渡す。
「最初から見て行こうか」
「そうしたい。やっぱり曖昧だから。覚えるんじゃなくて思い出したいから」
「そうだな。裁判で困らないようにしよう。お前が勝てるように」
その夜は遅くまでノートを見ながら話し合った。ジェイが時々シャーペンを走らせる。蓮が日付と書いてあるものの違いを教えていく。
日曜もそれで一日を過ごした。ジェイの用意が徐々に出来上がっていく。
思い出したかったけど、思い出せば苦しいこと。その狭間で胸が締め付けられる。
「俺、裁判に勝つからね。あの人に負けない。俺は襲われたんだ、俺には悪いところなんか無いんだ」
18日は目の前。そしてその次はジェイが出廷することになるだろう。
相田とジェイの一騎打ちだ。
いよいよレイプについての糾弾が始まる。
――第六部 完――
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