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「三途、池沢に」
「手配つけました。会社の心配はいりません」
「用意周到だな」
「しばらくは課長は要りませんよ。大滝常務には池沢さんから連絡が行ったはずです」
これじゃまな板の上の鯉だ。イチの丁寧な運転で病院にはあっという間についた。
佐野医師の検査を受けて蓮はこっぴどく怒られた。
「我慢はだめだ、そう言ったはずだ」
「そんなには……」
「それに下血したな?」
「少しです」
「来るつもり、無かっただろう!」
「落ち着いたら来ようと……」
「落ち着いたらも何も悪化してるじゃないか、こんなに」
そばにいるジェイが青くなってきた。肩に載っている三途の手に力が入った。
(しっかりなさい!)そう言われているようだ。
(先生の話をちゃんと聞かなくちゃ!)
ジェイは医者の言葉に集中した。
「潰瘍は3ヶ所だ。出血している。もっと放っといたら大出血を起こしていただろうよ。そうなると死ぬこともある」
「え!?」
思わずジェイの声が出た。
「そうなったらってことだ。驚かなくていい、まだそこまで行ってないから」
佐野はジェイに優しく言った。
「今なら大きな手術をしなくても大丈夫だ。内視鏡的止血と投薬療法、食事療法だな。ただひどい貧血も起こしているからね、正直きわどかったと思う。こういう馬鹿はちゃんと見張っとかなきゃだめだ」
蓮はすぐに奥に連れて行かれた。
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