1.我慢

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  「三途、池沢に」 「手配つけました。会社の心配はいりません」 「用意周到だな」 「しばらくは課長は要りませんよ。大滝常務には池沢さんから連絡が行ったはずです」  これじゃまな板の上の鯉だ。イチの丁寧な運転で病院にはあっという間についた。  佐野医師の検査を受けて蓮はこっぴどく怒られた。 「我慢はだめだ、そう言ったはずだ」 「そんなには……」 「それに下血したな?」 「少しです」 「来るつもり、無かっただろう!」 「落ち着いたら来ようと……」 「落ち着いたらも何も悪化してるじゃないか、こんなに」  そばにいるジェイが青くなってきた。肩に載っている三途の手に力が入った。 (しっかりなさい!)そう言われているようだ。 (先生の話をちゃんと聞かなくちゃ!)   ジェイは医者の言葉に集中した。 「潰瘍は3ヶ所だ。出血している。もっと放っといたら大出血を起こしていただろうよ。そうなると死ぬこともある」 「え!?」  思わずジェイの声が出た。 「そうなったらってことだ。驚かなくていい、まだそこまで行ってないから」  佐野はジェイに優しく言った。 「今なら大きな手術をしなくても大丈夫だ。内視鏡的止血と投薬療法、食事療法だな。ただひどい貧血も起こしているからね、正直きわどかったと思う。こういう馬鹿はちゃんと見張っとかなきゃだめだ」  蓮はすぐに奥に連れて行かれた。  
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