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朝、目が覚めれば香ばしい匂いが漂ってきた。その匂いにつられるように少女は身を起こすと頭を乱暴にかきながら掛け布団を剥いで布団から出る。
「おはよう、今日はなに?」
少女はまだ目覚めたばかりの目をこすりながら席に座ると目の前にはホカホカのご飯と魚、野菜、汁物といったバランスの良い食べ物が並ぶ。
「今日はシャケがメインよ、知美好きよね」
その言葉に知美と呼ばれた少女は、飛び上がるようにお皿の中を覗き込んだ。
「あ~!ホントだぁ!やったー!ママ大好き!」
嬉しそうに顔を歪ませる知美に母は微笑み、箸を渡しその前の席に座る。
「いただきまーす」
食べる前に手を合わせて挨拶をすると茶碗を片手に持ち早速好物のシャケをひとつまみ口の中へ運ぶ。
「ん、美味しい!」
知美は満面の笑みで料理の感想を口にするとゆっくりと朝ごはんを味わいながら胃の中へと運んで行く
「もう直ぐ学校の時間なんだから着替えちゃいなさい」
母はそう言うと全く手のつけていない料理をラップにかけて冷蔵庫の中へとしまう。
食べないの?と不思議そうにする知美に母は苦笑いしながら「後で食べるから」といってまた台所に立って傾けを始める。知美はそんな様子を静かに見つめながら「ふーん」と声を出し残ったご飯粒を一粒も残さず口の中に入れる。
「ご馳走様でした」
知美はパッと椅子から立ちがると空になった食器を手に持ち台所に置く。
母の様子を心配そうに伺いながらもジリジリのにじり寄ると母にガバッと勢いよく抱きついた。
「あらあら、あなたはいつも甘えん坊さんねでも、私は少し心配だわあなたがいつまでも親離れしそうにないから私がいなくなるったらどうするのかしら」
そう悲しそうに微笑む母に、主人公は「ママ」と小さく呟くとパッと手を離し部屋に戻った。
制服へと着替え、歯を磨き、茶色いザンバラ髪をセットしながら教科書を詰め込んだ鞄を片手に部屋から出てくると台所にあった時計は7時40分を指している
「げっ 遅刻する!行ってきまーす」
「知美今日も頑張ってね」
台所には食器のお皿を洗う母の後ろ姿が見えた、知美はそんな母の後ろ姿へ一声掛けると靴を履き勢いよく扉を開け、駆け出して行く。
これが知美の日常だ、父は知美が産まれる前に他界しており母子家庭として、援助を受けながらもやっと生活している。
知美はそな生活を苦とは思ったことはない、逆に幸せだと思いながらも生きていた。
母は体が弱いにも関わらず知美を育てるためにパートの仕事をこなし、食べ物には不自由させないといつも頑張ってくれている、そんな母に知美は少しでも御返しをしたいと思いながら毎日を過ごしていた
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