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その時の私に、そんな毎日が突然無くなり、大きく変化することになるなんて思いもよらなかっただろう。
「あ バス来てる」
学校までの道のりは遠く知美はいつもバスで学校まで向かっていた。
バス亭までにはギリギリ間に合い待っていてくれた運転手さんにお礼を言いながらバスへと乗り込む。
知美が乗り込みすぐ、バスの扉は音をたてながらゆっくりと閉また。バスが動き出しちょっとした揺れに揺られながらいつもと変わらない道を通って行く、
知美はボーッと窓の外を眺めていた。
そんな時、知美の頭に一発の衝撃が走った。
「たぁ〜っ!!毎朝毎朝何するのよ!!」
「よぉ マザコン、俺は毎朝その呑気な顔を整えてやってんだよ」
知美の隣には同じ制服を着た男子がいた。茶髪の男子生徒は意地悪そうにつり上がった細い目と口元には笑みを浮かべていた。
知美の腐れ縁で幼馴染だ。いつもこうやって知美にちょっかいを出しては知美に小さな嫌がらせやイヤミを言ってきた。
「何よ!太一の馬鹿野郎マザコンは認めるけど間抜けな顔とは何よ!バーカ」
「俺は呑気な顔って言ったんだよ、てかマザコンは認めるのか」
言い返せず思わず幼稚な暴言を吐く知美に太一はさらにバカにしたように知美を見つめた。
「何よイヤミつり目!」
「お前の方がバカだろ、てかイヤミつり目ってお前ホント、ネーミングセンスゼロだな」
知美はキッと睨み付けると太一の足を蹴飛ばし気晴らしに窓の外を見つめた。
すると黒い影が一瞬その横を通り過ぎ、大きな衝撃が動いているバスに起こった。
車内は大きく揺れ、知美の視界は真っ暗に染まった。脳裏に一人で台所に立つ母が映った。
「ママ」
人生最後の言葉は真っ暗に染まった世界の中で弱々しく消えていった。
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