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「なぁ、この作戦どうなると思う?」
ラグナル王国中央エリア・王都ラグナルの防衛の要衝の一つであるセズ砦。その砦を囲むように広がる森の中に男の声が響いた。
男の声音には作戦が失敗するかもしれないという不安も、成功への期待もまったく感じられない。
ようは、「単独隠密行動を旨とするはずの狙撃役の護衛」という近接職には少々以上に物足りず、万が一でもなければ出番の無い役割を請け負う羽目になり、その万が一も起こらなかったために大いに手持無沙汰になった彼の暇つぶしだ。
白門の守護者陣営の中でも名の知れた魔導士ギルド〈白蓮〉が主に防衛を担当していることから、第一目標である陽動すら危ういのではと懸念されていた戦闘だったが、蓋を開けてみれば狙撃隊による見張りの無力化、近接隊の突入制圧まで目立った被害もなく終わってしまった。
今まで激しく鳴り響いていた戦闘音も既に止んでおり、これからまた大規模な戦闘が起きるとは考えにくい。本来は、主力本隊の王都襲撃時に予想される周辺陣地からの援軍を釘付け、可能ならば漸減ののち散開、撤退を目的としていた為、制圧は嬉しい誤算だ。
草むらに伏せていた影は溜息を一つ。弾道安定の強化が得られる伏射姿勢を解き、スコープから目を離す。そのまま構えていたボルトアクションライフルのスリングを肩にかけて立ち上がった。
「さぁ? でも言われたことは完璧にこなしたんだし、後は他の陽動PTと王都攻略組次第じゃない?」
風が吹いた。今まで月を覆っていた雲が流れると、暗闇に包まれていた森の中に二つの人影を照らし出す。
一つは青白い肌を持ち茶色の髪を結いあげた大男だ。
額からは鬼人の特徴である二本の角が生えており、身に着けているのは黒鞘に納められたカタナと鎧甲冑。それは彼が、基本戦闘六職・剣士から派生する職の一つサムライであることを示している。
もう一つの影は獣人の特徴である獣の耳と尾を持つ中背の少女のものだ。
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