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腰まである長い黒髪に金色の瞳を持つ彼女の防具は、種族との親和性の高い銀の毛皮で出来た装備だった。
上半身は二の腕と腹が露出しているベストとアームガード、腰には深いスリッドの入ったスカートの見た目をしているフレアコートが巻かれ、足首から脛にかけてはルーズソックスを思わせるレッグガード。
先まで構えられていた武器であるボルトアクションライフルは銃撃士の主武器の一つだ。
銃撃士の少女ーーリノは、サムライの男を視界に納めると皮肉気に唇を歪めた。
「ま、どっかのギルドに所属でもしてれば、王都強襲組に混じってどう転ぶのか間近で見られただろうけどね」
「だよなぁ……まっさか今になってソロが恨めしく思うなんてな」
「でも、なんだかんだこれがベストだったんじゃない? そもそもWor Maniacsの連中が陣頭に立たなきゃ黒門は纏まった行動なんて取れもしなかっただろうし。特攻じみた本陣攻めなら私らみたいなソロ専の寄せ集めPTより、連携慣れしてる大手ギルドの連中の方がよっぽど上手く立ち回るでしょ」
リノは思いのほか固まっていた肩から力を抜きつつそう言うと、ことの始まりを思い出す。
そもそも今回の作戦ーー各地に点在する要衝への同時大規模陽動と少数精鋭でのラグナル王都強襲を立案したのは総勢四十八名からなる一つのギルドだ。
その名をWor Maniacsと言う。
新世代VRーMMOーRPG〈リライフテイル・ダイブオン〉の世界において知らぬもの無しとまで謳われた対人戦闘に特化したそのギルドは、圧倒的に数が劣り、纏まりにも欠いていた黒門の守護者陣営の大多数を一気に纏め上げた。彼らが声を上げなければ、黒門陣営が今回のような大規模作戦を行うことは無かっただろう。
なにせーー
(白門の連中には明確なクリア条件ーー目標がある。でも、恐らく黒門はここにいるだけでほぼ目標を達成しているようなもん。妨害や反抗はしても、本拠ごと……なんて考える奴ら、そうそう居ない)
つまり、今回御旗を掲げた奴らは噂に違わぬ狂人集団だったというわけだ。
もっともーー
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