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どこの世界かも、いつの話かもわからない話。
技術の進歩により、人間は寿命を変えられるようになった。
寿命というのはXという細胞に支配されている。
人は生まれながらにして様々なサイズのXを持っており、そのXの大小で寿命が決まるのだ。
Xは残念ながら人工的に生み出すことはできない。
しかし他人から奪い取り、注入することで寿命を延ばす実験に成功した。
犠牲にするのは他人の寿命。
そう、ここでは寿命取引が平然と行われる世界なのである。
もちろん非難する人間はいた。
人間の犯していい領域を超えている、神への冒涜だと。
そして他人の人権の侵害であるとも言われた。
しかし事故等による著しい多臓器へのダメージでもう生存は不可能だが、Xはまだ潤沢にある。
そのXを微量のXしか持たずに生まれてきた子供に注入し、平均寿命まで生きながらえた例が出てきてから人々の感覚は変わった。
いわゆる臓器移植と同じ考えになったのである。
しかし悪用する人間というのはいつの時代もいるものだ。
Xは特殊なピンを指すと簡単に採れてしまう。
それもごく微量なので、かかる時間は3秒ほど。
抜かれた人間は死んでしまう。
金に目が眩んだ悪人はこぞって人を襲い、永遠の命に目が眩んだ金持ちが買い漁る。
世界は地獄のような治安になっていた。
そして一般人たちが対抗して抜き取られないようにする薬を開発、犯罪者はさらに対抗してその薬の効能を無効にした上でXを採るピンを開発。
いたちごっこは続き、薬を買えない貧乏人はXを強奪され、中流家庭はその薬の購入に給料の大半を奪われる。
そして生きる目的を見失い結局は強奪される。
金持ちだけがXを違法に買い求めて注入し続け、生き続ける。
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