第3話 初飛行

1/2
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ

第3話 初飛行

昭和18年6月。 陸軍航空審査部がある多摩陸軍飛行場(福生飛行場) にジュラルミンの銀色が美しい出来立ての機体が2機翼を休めていた。 新型戦闘機キ84の試作2号機と3号機である。 滑走路の横にある建物の中では陸軍士官と中島飛行機の技術者が対談していた。 陸軍士官はキ84のテスト担当になった岩橋少佐である。 中島飛行機からは若手技術者の富貴ハヤトが試作機引き渡しの手続きのため派遣されていた。 ハヤト「ではっ明日担当技師と整備士らがまいります。」 岩橋「わかりました」 そう言って岩橋少佐は機体受領書類に署名、捺印した。 岩橋「飛行テストが楽しみです」 岩橋少佐はノモンハン事件以降、この航空審査部で様々な機体の飛行テストを行っていた。 扱った機体は国産機だけでなく、ドイツのメッサーシュミットBF109タイプEなども性能テストで操縦した事があった。 操縦性能を重視する国産機に比べてドイツ機の一撃離脱を目的とした乗り味はノモンハンでソビエト機が一撃離脱戦法を仕掛けてきた時を思い出させた。 時代は1000馬力クラスの軽戦闘機から2000馬力クラスの重戦闘機に移り変わろうとしていた。     
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!