ラストバトル回

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「............間違っているものか!俺はこの道を選んだ。それ故に失ったものはもう戻らない!もう止まれないんだよ、ユウキッ!!」 苦痛に顔を歪めて、しかし伊吹は信じる。間違いだとしても、認めはしないだろう。これまで失ったもののために。 「だったらオレが止める。あなたの計画を、オレの炎が灰に変えてやる!!」 「......体に負荷はかかるが仕方ない。もう一度記憶を」 二人の距離は、僅か1メートル。 ユウキの着るアーマーは、この場にはない。 飛行形態でも、五分はかかるだろう。 それだけあれば、伊吹は簡単に再び記憶を爆── 「──唱装(キャストッ)!焔音ユウキィィッ!!!」 腕を、何かを殴るかのように振るったユウキ。 それに連動するかのように、伊吹の脇腹に飛来突撃する赤いスーツケース。 「か、はっ......!?」 吹き飛んだ伊吹は、地面を転がり止まる。 ──馬鹿な。何処からアーマーが来た! 顔を上げ、見回す。 痛みに顔を歪めながら、笑う白髪の少女。 指先は黒く影に染まり、彼女の側の宙空に『スーツケース一つ通るくらいの穴』が開いていた。 「虚構世界を渡したか......!」 「私の能力でも、貴方と戦えます......!」 気付けばキャスター達は、四人とも臨戦態勢だった。 日本刀を構えるスズリ。 覆剣を一段階納刀したミコト。 フラつきながらも、サブマシンガンを握るコトハ。 「......ふん。形成逆転だなどと思っていないだろうな。全員復活したところで、俺の敵ではないッ!!」 言霊を下方向に放出。白衣をたなびかせて宙へ浮かぶ伊吹。 手の届かない宙空に立った彼は、爆弾(たいよう)を背後に五人を見下ろした。 「詠唱省略。〈懐かしき最後の切り札(レインボム)〉!」 カッと太陽の輝きが増し、次の瞬間、幾筋にも降り注ぐ光柱。 地面に刺さり、爆発。砕き、抉る。 規格外の威力。地表付近は全て砂塵に覆われる。 「何度言えばわかる、無駄だと。これ以上は、本当に死ぬぞ」 次第に晴れる地面。伊吹は、一か所に固まった五人を見た。 「ユウキか。想像を上回る速さだ」 傷だらけで、互いが互いを支えて立つ四人(ごにん)。 「あの言葉か。お前をそこまで強くするのは。俺が唯一爆破できなかった記憶。その記憶に触れて、俺はこの火傷を負った」 右手の火傷跡を眺めて言う。 真一が持てる力の全てを使い残した言葉は、それを傷つけんとする者を焼いた。
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