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「......そろそろ準備をしないとな。今帰るならば見逃してやる。だが、追ってくるならば、遠慮はしない。殺す」
宙を滑るように飛ぶ伊吹は、施設の方へと消えていく。
残ったのは、標高が低くなった爆破跡地と、傷だらけの五人の子供達。
「ごめん、ウチ、倒れ......」
気力のみで耐えていたコトハが、緊張の緩みと共に倒れる。
「コトハちゃ、きゃふ!」
彼女を抱えようと手を伸ばしたナタリアも、支えきれずに共に倒れてしまう。
「くそ......あと三十分もないのに!」
もう無理なのかと地面を拳で叩くスズリの、地を睨む顔の横。地面を踏みしめ、ユウキは立つ。
「オレは行くよ」
「無茶だユウキ!君でも勝てない」
「それでも、行かなきゃいけない。止めなきゃいけない......!」
彼の目は、ただ伊吹が去った方向を見つめる。
「父さんの復讐の為じゃないよ。オレは、伊吹さんの計画を止めるために行くんだ」
「言葉は大きな力を持っている。だからきっと、言葉は戦争を止めることだってできる。でもそれは、こんなやり方じゃないはずだ。〈平和な世界〉は、現れる〈癌〉を悉く爆破するんじゃなくて、みんなが手を繋いで作るべきだ」
「言葉って、繋ぐためのものだろ?」
いつも通り、優しく笑うユウキ。
ここにいるのは、そんな彼の笑顔と言葉に救われた者達ばかりだ。
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