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「来たか」
偽祭壇横の施設。パソコンの画面に映る、急接近する五つの影。
「どうしたの?伊吹さん」
「いや、お客さんが来ただけだよ。あまり来てほしくない、ね」
「追い返してくるから君はここで待っていてくれ」とやさしい顔でユウキに言って、しかし背を向け歩き出した伊吹の顔は、どこまでも冷たい爆弾魔の目。
▽
「言語世界が晴れてるとか、初めてちゃう!?」
変形したスーツケースに乗り、高速移動しながらコトハが叫ぶ。
「あの太陽の真下だ。力を温存しても勝てない。一気に決めるぞ!」
遠くに、廃世界に似合わぬドーム型の建造物が見えた。
「唱装、刀道スズリ!」
「唱装、ステラ・ナタリア・イストリア!」
「唱装、引金コトハ!」
「唱装、琴浦ミコト」
宙に飛んだアーマーが分離。弧を描き着装。スピードを落とさず着装完了した四人は、腕時計型装置を叩き、叫ぶ。
「「「「〈aid.0〉!!」」」」
四人を覆う影。
スズリの黒袴。
ナタリアの黒踊衣。
コトハの黒軍制服。
ミコトのパーカー。
四人は影に隠れ、荒野に一人立つ伊吹に瞬間接近。
まず動いたのは、スズリとミコト。
「打ち、撃ち、討て。刀剣創造、幻想の三剣・幻影の双王。一閃。我が千刀は総じて虚物。我が全刀は果たして虚構。この一刀。刀身鏡は黒しか写さねど、万物喰みて、虚空で斬る。特殊霊刀召喚、〈虚〉!!」
「幾層もの嘘の奥。隠していたのは薄っぺらな真実。覆剣極薄刀、〈告白〉」
伊吹の背後斜め。二人は瞬間移動で飛び出した。
スズリが握る〈虚〉。小刀の刀身があるべき場所に、黒の直方体──虚構世界への入り口──が浮いている。
ミコトが振るう〈告白〉。覆剣の、最内側の刀身はどんな物質よりも薄い。
二振りの『防御不能』が、同時に伊吹を襲った。
「〈言葉のナイフ〉と〈劇的な嘘〉か」
しかし、宙に止まる。
まるで何かに阻まれたかのように、剣はそれ以上伊吹に近づこうとしない。
「なに......!?」
「体内の言霊を周囲に放出し続けているだけだ。そんな小さな黒では吸収しきれまい」
浮いたままの二人に手を伸ばした伊吹は、両の指を鳴らす。
二人の胸元で起きる高威力の爆発。紙屑のように吹き飛ぶ。
しかし『劇的に無傷』のミコト。再び突進──
「──無駄だよ」
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