ラストバトル回

5/12

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
▽ 「来たか」 偽祭壇(ドーム)横の施設。パソコンの画面に映る、急接近する五つの影。 「どうしたの?伊吹さん」 「いや、お客さんが来ただけだよ。あまり来てほしくない、ね」 「追い返してくるから君はここで待っていてくれ」とやさしい顔でユウキに言って、しかし背を向け歩き出した伊吹の顔は、どこまでも冷たい爆弾魔の目。 ▽ 「言語世界が晴れてるとか、初めてちゃう!?」 変形したスーツケースに乗り、高速移動しながらコトハが叫ぶ。 「あの太陽の真下だ。力を温存しても勝てない。一気に決めるぞ!」 遠くに、廃世界に似合わぬドーム型の建造物が見えた。 「唱装(キャスト)、刀道スズリ!」 「唱装(キャスト)、ステラ・ナタリア・イストリア!」 「唱装(キャスト)、引金コトハ!」 「唱装(キャスト)、琴浦ミコト」 宙に飛んだアーマーが分離(パージ)。弧を描き着装。スピードを落とさず着装完了した四人は、腕時計型装置を叩き、叫ぶ。 「「「「〈aid.0(エイド・ゼロ)〉!!」」」」 四人を覆う影。 スズリの黒袴。 ナタリアの黒踊衣。 コトハの黒軍制服。 ミコトのパーカー。 四人は影に隠れ、荒野に一人立つ伊吹に瞬間接近。 まず動いたのは、スズリとミコト。 「打ち、撃ち、討て。刀剣創造、幻想の三剣・幻影の双王。一閃。我が千刀は総じて虚物。我が全刀は果たして虚構。この一刀。刀身鏡は黒しか写さねど、万物喰みて、虚空で斬る。特殊霊刀召喚、〈虚〉!!」 「幾層もの嘘の奥。隠していたのは薄っぺらな真実。覆剣(メビウス)極薄刀、〈告白〉」 伊吹の背後斜め。二人は瞬間移動で飛び出した。 スズリが握る〈虚〉。小刀の刀身があるべき場所に、黒の直方体──虚構世界への入り口──が浮いている。 ミコトが振るう〈告白〉。覆剣(メビウス)の、最内側の刀身はどんな物質よりも薄い。 二振りの『防御不能』が、同時に伊吹を襲った。 「〈言葉のナイフ〉と〈劇的な嘘〉か」 しかし、宙に止まる。 まるで何かに阻まれたかのように、剣はそれ以上伊吹に近づこうとしない。 「なに......!?」 「体内の言霊を周囲に放出し続けているだけだ。そんな小さな黒では吸収しきれまい」 浮いたままの二人に手を伸ばした伊吹は、両の指を鳴らす。 二人の胸元で起きる高威力の爆発。紙屑のように吹き飛ぶ。 しかし『劇的に無傷』のミコト。再び突進── 「──無駄だよ」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加