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「君の能力は正直、俺には何の障害でもない。起爆」
ナタリアとコトハの間で起爆。爆炎爆風轟音砂塵を撒き散らし拡散するエネルギー。
「きゃぁぁっっ!!」
守るすべなく二人が飛ぶ。
直撃で無くともこの威力。
「直接当てたら、いくら君達でも死ぬ。そして俺はできれば君達を殺したくない。が、計画を邪魔するならば容赦はしない。わかるな?頼むから退いてくれないか」
「うるさい!ユウキはどこだ!」
諭すように言った伊吹に吠えたスズリ。
「......ユウキは施設内でおとなしくしてるよ。出来れば放っておいてやってくれないか。アイツは今、幸せだ」
「なにを言ってる!」
「ユウキの中の、『父親に関する記憶』と『言語癌に関する記憶』を全て爆破した。もう君達のことも覚えていないよ。......そうだな、君達の記憶も全て爆破しようか。そうすれば、無駄な足掻きなどしなくて済む」
「なっ......」
言葉を失う四人。ゆっくりとスズリに歩み寄る伊吹。
身体中が爆破の衝撃で痛む。足が言うことを聞かず、逃げられない。
「させるか!」
背後から伊吹に斬りかかる唯一無傷の少年はしかし、またもや剣は空中で止まり。
剣を握る手の近くで小さな爆破。今度は覆剣を奪われる。
覆剣を逆手に持つと、ミコトの腹を刺し貫き、地面へ突き立てた。
「じっとしてくれ。手間がかかる」
言い捨てると、伊吹は白衣の袖を捲り、ミコトの胸へ手を伸ばし──
「──神器、〈共鳴鏡・迷宮〉!!」
響いた声。
伊吹はハッと振り返るが、もうそこには誰もいない。だが、宙に浮いた一枚の鏡があった。
そこに映る、随分とやつれた顔の自分と、
「............彼女はもう死んだ!!」
彼の背後で笑顔で立っていた『褐色肌の女性』に、怒鳴り、振り向きざまに爆撃を放つ。
「くぅっ!!」
爆炎で姿が見えなかったのは、彼にとって幸いだった。
〈共鳴鏡:迷宮〉。〈色欲〉が共に鏡に映った対象の、最も愛する者の姿に変わる神器。
地に落ちた鏡を思い切り踏みつけ、伊吹は頭を抱える。
「くだらない技を使ってくれるな......〈色欲の罪〉!」
パシンと鏡にヒビが入る。砂煙の中のラストが光り、晴れたそこには先程までと変わらぬ黒い異形の姿。
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