ラストバトル回

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「私の〈ラブソング〉が......!」 悲愴を顔にするラスト。そこに〈片手間爆弾(ハンドメイドボム)〉が着弾。 悲鳴と共にラストは吹き飛び、塵芥のように地面を転がった後、動かない。 「ラスト!」 「ふぅ。嫌な能力だよ。二度も殺させないでくれ」 ぼそりと呟いた伊吹。 その恨みをぶつけるかのように、勢いよくミコトの胸へ手刀を刺す。 「くっ......!やめ、ろ!!」 もがくミコト。だが剣が腹を刺し思うように抵抗ができない。 「暴れるな。すぐに終わる」 「やめろ!」と再び立ち上がったスズリに、容赦無く打ち込まれる爆弾。 「ミコト!」 「ミコト君!」 悲鳴に近い声をあげた二人。 形容し難い、胸の奥の大切な部分を弄られる不快な感覚に耐えながら、無表情の伊吹を睨み付けるミコト。 その時。 「伊吹さん、何してるの?」 聞き慣れた、声が聞こえた。 少し離れたところに、ポツンと立つ少年。 濁った瞳の、彼は。 「......ユウキ!!」 四人の顔が希望に満ちた。 「ユウキ君!」 「ユウキ!」 「ユウキ!」 口々に名前を叫ぶ。 痛みに顔を歪めながらも、笑顔で。 いつも仲間を引っ張ってくれた彼との再開に、大きな期待を抱いて。 「え、あと......、ごめん。誰かな?」 しかしその主人公は、ポリポリと頬を掻くのみに終わる。 「そうか、記憶を......!」 悔しそうに歯を鳴らすコトハ。 伊吹はミコトの胸から腕を抜くと、ユウキの元へ慌てて駆け寄った。 「中で待ってろと言っただろ!」 予想を超える伊吹の剣幕に、ユウキは年相応に怯える。 「ご、ごめん......なさい」 「まったく......」と漏らす伊吹はユウキの肩を持ち、「戻ってるんだ。すぐに俺も戻る」と促した。 「でも、その子達は?」 「問題ない。彼らは大丈夫だ」 「そ、そう?」と言って、施設へと戻って行くユウキ。 「待ってや、ユウキ......」 コトハの祈りは、彼には届かない。 対してまたミコトの元へと歩み寄る伊吹。 腕を伸ばし、またミコトの胸へ腕を── 「──ユウキィィッ!!!」 轟くのは、スズリの叫び。 遠く、背を向けて歩いて行くユウキを、それは振り向かせた。 ▽ オレは、背後から名前を呼ぶ声を聞いて振り返った。 絞り出した、叫び声だった。 「『僕のナイフは、君に刺さるか!?』」
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