0人が本棚に入れています
本棚に追加
問いかけ。
投げかけられた言葉と共に、一本のナイフが投げられた。
刃先はこの胸を真っ直ぐに狙い、爆弾に照らされ鋭く光る。
ゆっくりと時間が流れた。
彼の言葉が頭の中で響いた。
『届くか』
頭の中で、誰かが言った。
──お前、『僕は人を傷つけたくない』って泣いてる奴の〈言葉のナイフ〉が、本当に刺さると思ってんのか?
──『死ね』って言われようが、何を言われようが、『そんなこと言いたくない』って思うことを理解してあげていたら、そうして悩んでいると知っていたら、言葉のナイフで傷つきゃしねぇよ!
聞き慣れた声だ。
そう、これはオレの声だ。
今、ゆっくりと近づくナイフが、『無くしてしまった何か』をくれそうで。
▽
響くのは、甲高い破砕音。
まるで脆い硝子細工のように砕け散ったナイフが、胸元に散る。
「............刺さらない」
ユウキの口から溢れたのは、答え。
自分でも呆然と、無傷の自分の胸元を見て、呟く。
「......刺さらないよ」
自分でも、理解できていないような喋り方だった。
「しまった!」と伊吹は叫び、慌ててユウキに駆け寄る。
「ナイフ......〈言葉のナイフ〉。スズリ......スズリ......!?」
曇った瞳が僅かに取り戻す輝き。
「スズリ。スズリだ。君の名前は、刀道スズリ。なんだ......くそっ、頭が痛い!痛いよ!」
「ナタリア」「コトハ」「ミコト」「諏訪さん」「メカニック」「シダユリ」「オガユウ」「言語世界」「キャスター」「キャンサー」
溢れる言葉。まるで泉のように湧き出す。止められない。
「ユウキ!やめろ!思い出すな!」
伊吹がユウキの肩を揺するが、止まらない。
「アーマー」「詠唱」「虚構世界」「ゼロ化」「七つの大罪」「神器」「DC5」「レイ」「エン」「ツツミ」「ケン」「言霊濃縮剤」「誘拐」「爆弾魔」「爆弾」「爆破」
「やめろ!真一の記憶まで戻ってしまう!悲しいだけだ!辛いだけだ!思い出すな!ユウキ!」
──「父さん」
「おうユウキ、おはよう」と眠そうな父。
「ふぁぁ、おやすみ」と眠そうな父。
「すごいなユウキ!一等賞か!」頭を撫でる。
「ユウキ。ちゃんと謝りなさい」真剣な顔で怒る。
「ふはは!父さんに勝とうなんて五億年早いわ!」ババを引かせて高笑いする。
最初のコメントを投稿しよう!