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まさか……ウソでしょ。
妹の彩奈が連れてきた彼氏というのは、わたしの元カレだった。
「お姉ちゃん、大輔さんのこと、知ってるんだよね?」
「え、ええ……」
「お久しぶりです。彩奈が綾子さんの妹だなんて、最初はビックリしました」
「そ、そうでしょうね。あたしも、ビックリだわ」
本当に、心臓が止まりそうになるほどビックリした。
「あたしたち、新しいスーパーに買い物に行くんだけど、お姉ちゃん何か買ってきて欲しいもの、ある?」
「そ、そうね。マヨネーズがないから、買ってきて」
「マヨネーズ? お姉ちゃんったら。こんどできたスーパーって、スィーツが売りものなのよ。マヨネーズなら、いまはコンビニのプライベートブランドのほうが安いのよ」
「そう」
それにしても、どういうつもりなのか……。
十二年ぶりに見る大輔は、何も変わっていないように感じられた。わるい夢ではないのかと、わたしは何度もたしかめた。
そして笑顔で出ていくふたりを見送りながら、わたしは思わず大輔との記憶をたどっていた。
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