初めてのオンナに

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初めてのオンナに

 大輔と知り合ったのは、学生時代のことだ。サークルの合同コンパで意気投合して、デートに誘ったのはわたしのほうだった。 「もらった映画の試写会の招待券があるんだけど、ふたり分なのよね」  その映画は、愛がテーマのフランス映画だった。公開前なのでヘアも無修正。わたしたちは試写会場のホールを出るころには、恋人同士のような雰囲気になっていた。そして、食事代を安くあげるために、ふたりでワインとピザを買ってわたしの部屋に。 「きょうは最高に愉しかったよ」  というかれの手を、わたしは握ったのです。 「泊っていって。もう遅いし」 「そうだね」  ワインのボトルが空になるまで飲んで、電気を消したのが合図でした。 十九歳の男女がひとつの布団のなかで、やることは決まっている。窓からの薄明かりが、わたしたちの抱擁をうつくしく見せていた記憶がある。わたしたちは若い肉体を謳歌した。  かれは初めてのようだった。男の経験値というのが、女にはわかるものだ。とくにわたしのように、中学生のときに担任教師と男女の関係をむすんだオンナには。 わたしのカラダの中で、かれをオトコにした嬉しさはしかし、ふたりの関係をもの足りないものにした。わたしはもっと年上の、大人のオトコにあこがれていたのだ。 「今夜? ダメだわ。先生に、研究室に呼ばれてるから」  携帯電話で何度、大輔の誘いをことわったことだろう。  わたしには複数のボーイフレンドがいた。同じゼミの年上のカレは面倒見がよい。新宿で待ち合わせる遊び人のカレは、いつもレストランとスナックでおごってくれる。そして大輔と知り合ったころに、わたしは史学ゼミの教授と男女の関係になっていたのだ。
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