妹の結婚

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妹の結婚

 一年ののち、妹の彩奈とわたしの元カレの大輔は結婚した。 七つも年下の妹の幸福に、わたしのこころは押し潰されそうだった。その妹を可愛がってきた父は、世間の父親がするように何かと生活設計に介入し、ついに新婚夫婦はわが家で暮らすことになったのだ。わたしはそのときに、独立を考えたのかもしれない。  大輔も恐縮していた。 「こうなるとわかってたら、君とも話し合っておくべきだった」 「いまさら、何を? いったいどういうつもりで、妹となんか!」 「付き合いはじめてから、君の妹さんだとわかったんだ」 「ふつうは、そういうことしないでしょ」 「本気で彩奈を愛してるさ」 「わたしのことは、けっきょく愛してなかったのね。なんて移り気なひと。妹が心配だわ」 「そうは言うけど、君のほうが僕を振ったんだろ。あの教授とは、その後は?」 「やめて! 昔の話は。あなたには関係ない」 「……」  夜半に目ざめると、妹と大輔が抱き合っている物音が、するような気がする。わたしは寝不足になった。週に二日だけ父の運転するクルマで、職場とは名ばかりの大学に送ってもらう日々だ。  三十二歳をオールドミスなどと最近は言わなくなったものの、はやく誰かに救って欲しい。そんな焦りが、わたしを醜くする。やはりわたしは、オンナを浪費してしまったのだ。
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