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「俺を 殺せ。今すぐ」
蔵石は震えながら、眉のない眉間を寄せて
まばたきをし、息を荒げ出した。
... 怖がってる。
河から水音を立てて、何かが飛び出し
白い翼を広げる。ミカエルだ。
右手の抜いたままの剣を 水面の何かに向けた。
無傷だけど、天衣の上は裂けている。
「生贄を 奪っただろ?」
蔵石は、額から汗まで流し出した。
「殺せ。頼む... 」と、涙声で懇願する。
「俺は... アバドンは、あいつに 俺を与えた。
俺は、身体を ゆ 指の先から 喰われたんだ。
なん 何日も かけて... 」
「無理だ」と、ボティスが答える。
「魔人から 悪魔になったな?
魂を残して喰われている。それは呪いだ。
魂ごと喰われなければ、悪魔は消えない。
泣き喚く お前が気に入ったようだな。
お前が身体を手に入れる度、何度でも喰うつもりだろう。モレクは変態級のサディストだ」
ミカエルが空中から 一気に降下して
河の中に立つ 何かに斬りかかる。
肩口から両断されたように見えた そいつは
液体と気体の間のような身体を 一度揺らがせると
何故か 河の縁に立っていた。
ミカエルの天衣が、今 裂いたように音を立てた。
上衣は ぼろぼろだ。
「ハーゲンティ! どうなってる!」
くせっ毛ブロンドの髪を くしゃっと掴み
イラついた顔で、剣を槍のように そいつに投げた。
剣は、河の縁に立つ そいつをすり抜けて
ミカエルの天衣が また裂ける。
「物理的な攻撃は無駄だ。
跳ね返るが、お前に傷は付けられぬようだ」
ハティも そいつに息を吹くけど
そいつは砂に練金されなかった。術もダメだ。
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