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ボティスの首を掴んでいた手が
死んだ蝗になって、ぼたぼたと落ちる。
「もう下がれ、バラキエル! お前も!」
ミカエルが、ボティスを突き飛ばし
泰河も蹴り飛ばして、自分が そいつの前に立つ。
「俺が誰だか分かってるな?」と
無駄だと分かっている剣を突き付け
「天に連行する」と、出来ないことを言った。
「無駄だ、ミカエル。それは地界にも連行出来ん。
異教の者だ。身体は奈落に囚われている」と
ハティが そいつの後ろから言う。
そうだ。聖父でも こいつを殺らなかった。
預言者を通して、人々に “生け贄を捧げるな” と
戒めることしかしなかったんだ。
ハティたちは、元々は天使... 堕天使系の悪魔だから、触れられないってことか?
「身体が滅されていなければ、泰河が触れようと
また奈落の身体に、これは戻る。
再び這い出て来るだろう」
何かに気付いた朋樹が、足の下から赤蔓を
こっちに伸ばした。
「だから、“じゃあどうするんだよ” って
聞いてるだろ?! “奈落に帰す” のか?
それとも “新しい肉体” か?!」
ミカエルはイラついて、そいつの首を
剣の先で突く。その度 天衣が裂ける。
「俺から、逃げないことは誉めてやる!」
何か 違和感がある。わざとらしい気がする。
『逃げる?』と、陽炎に戻った そいつが
笑う気配と声をさせる。
『互いにだが、何の脅威でもないだろう?』
ジェイドのジーパンから赤蔓がスマホを抜くと
ボティスがそれを取って、印章の画を出した。
「ハティの隣に描け」と、オレに渡す。
地の精で印章を描くけど、これって...
「皇帝」
ボティスが呼ぶと、ハティの隣に
中世の盛装姿の男が立った。
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