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胸に掛かるウェーブの黒髪。白い肌。 完璧な形の眉と鼻。男性美のくちびる。 長い睫毛に 凛とした碧眼。 黒いコートの中に黒い刺繍のベスト。 白いシャツに、フリルみたいな白いタイ。 ブリーチズ... 膝下までのタイトな黒いパンツに 黒いブーツ。 アビ・ア・ラ・フランセーズ。ロココ調。 今日は黒い帽子まで被っている。 「召喚したな?」 不機嫌だ。 「ハゲニト。何故 元の姿でいる? セクシーだが お前に帽子を、と 思って持って来た。 似合いそうだったから。人型になれ」 皇帝の帽子を被されて「迎えにも上がらず... 」と ハティが言いかけると、皇帝は前を見て 「ミカエル」と くちびるを動かした。 「久しぶりだ、ルシフェル。 お前がやりたきゃ 後で やってやるけど、聞け」と ミカエルが笑う。 「いいか? 俺はエデンから降りた。 お前は人間に召喚された。地上(ここ)で会ったことは 誰にもバレちゃいない。そして、これを見ろ」 皇帝の眼がミカエルから、目の前の陽炎(そいつ)に移る。 ゴッ と、空気が ぶれた。 強烈な光を発した皇帝の背に、五対の翼が開き ウェーブの黒髪を割って、うなじからも一対の翼が開いた。盛装が解けていき、幾重にも重なった天衣のようなローブに変わっていく。 オレらは、口を開けることしか出来なかった。 すげぇ...  神なんじゃないか と錯覚する。 さっきは耐えた 膝が震えた。 けど、皇帝を中心に 地面が円状に沈み 河川敷の草原にも道路にも、街や山にも 立て続けに雷が落ちる。ヤバい...
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