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「カナンの... 」と、皇帝が笑う。
「やめろ、ルシフェル!
俺に止めさせるなよ? 翼を仕舞え」と
ミカエルが陽炎越しに剣の先を向け
「ジェイド! 必要があれば地界に戻せ!」と
ジェイドを皇帝の隣へ行かせた。
『堕天使か。無意味だ』
皇帝は、まだ翼を出したまま
「これは父でも手が出せなかったが
これを殺れば、俺は父を超える... 」と
当然のように ジェイドの肩を抱き、煙を上げ
穴が開く程、目の前の陽炎を見つめる。
「翼を仕舞え! すぐに天の軍が降りるぞ!」
「何故、これがいる?」
「手違いが起きただけだ!
奈落から逃げ出しやがった! 翼を... 」
ミカエルが秤を左手に出すと
「ルシファー。契約だ」と、ボティスが言った。
「お前とだと?」
皇帝は愕然とした表情になって、翼を仕舞った。
それと同時に、ローブも盛装に戻る。
「ボティス、何を言っている?
お前は 元々俺の物じゃないか。
人間になったからといって、魂まで飲ませようというのか? いいや、飲むものか。
魂を飲んだら、俺は誰とキスをする?」
「それもそうだ。それならタダで聞いてくれ」
「タダ?」
「いや わかった。地上でワインとチェスを」
ミカエルがムッとしてボティスを振り向くけど
ボティスが手で “黙っとけ” と合図する。
「地上で... 」と、皇帝は隣にいるジェイドを
ちらっと見た。「いいだろう。願いを言え」
「これを吸収する身体を」
身体って、奈落からは 上げられないよな?
皇帝は「ふん。なるほど」と
陽炎の中に手を 突っ込んだ。
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