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皇帝の背後に、男が立った。 顎ラインの 黒いウェーブの髪に 黒いシルクハット。黒ぶちの眼鏡。 身体に沿う黒いジャケット。白シャツにワインのベスト。黒いラインタイ。白い手袋。 グレーの膝丈のチェックパンツ。黒ブーツ。 「ステッキを忘れた」 これがベルゼブブ... ? アリスにでも出そうだ。 皇帝とハティの間から顔を出して ワイン色の眼で、オレらを見渡した。 「ルシファー。これ、全部 私に?」 「全部違う」 「じゃあ、なんで地上に喚んだ?」と 泰河の顔を覗き込んだ後に、ジェイドを覗き込み 「何かの混血と祓魔」と、眉をしかめ ハティに「ハゲニト。いい帽子だ」と 褒めると また こっちに向いて 「ミカエル!」と、眼鏡の奥の眼を丸くした。 「すぐ気付けよ。下手なことをしたら 罪を量る」 「天使と何をしている? ボティス? お前、天帰りらしいじゃないか... 」 「ベルゼ。手がだるい。 これをやる。吸収しろ。身体は奈落だ」 ワイン色の眼が、皇帝の腕を伝って 心臓を掴む手に移る。 「ハダトじゃないか。カナンの王。 また会えて嬉しい。よくこんな強烈な奴を捉えてるな。さすがだ、ルシファー。飲んでやろう」 『ゼブル、よせ... 』 「“よせ”? 何故?」 ベルゼブブは、ハティと皇帝の間に入り 右手の手袋を外した。
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