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「えっ?!」 「うわ... 」 羽音を立てる蝿が、一斉に 陽炎を取り囲み 表面をざわざわ這いながら 黒い人の形を造る。 ベルゼブブの手首から先がない。 蝿たちはベルゼブブの手、一部らしい。 “蝿の王” って呼ばれてるもんな。 蝿で疫病を流行らせるのが、魂を奪う手段。 「ルシファー、もう手を離していい」 皇帝が手を抜くと、泰河も皇帝の肩から手を離して、オレの近くに来た。 振り向いたミカエルが「加護はあるけど 一応」と 泰河の額に触れると、泰河が、ふう と息をつく。 うん。皇帝は やべーし。 ミカエルは、癒しを与えたみたいだけど 沙耶さんみたいに キスじゃないんだ... 「ファウスト。お前は 肩に何を付けている? さっきから俺の手を焼くようだが... 」 皇帝はジェイドの肩を抱いたまま 河の方へ連れて行こうとする。 「ルシフェル、俺の加護だ。それ以上 勝手に動くな。派手に召喚円から離れるなよ」と ミカエルに言われて 「加護だと? 見せろ」と ジェイドのシャツの首を引っ張って、中を覗く。 「伸びるだろう? やめろ」と言うジェイドに ショックを受けた顔を向け 「クロスに加護を受けたな? 何故だ?」と ジェイドの両肩を手で掴んだ。 真正面から すげぇ見つめてるし。 「僕は神父... 」 「関係あるものか! 俺の愛を受け入れんというのか?! ボティス! お前もだ!」 「出たぜ、ジェラシィ」 「ジェイドさ、言い訳してねぇ? こないだは皇帝に、“お前は愛さん” って言ってたのにな」 オレと泰河が ぼそぼそ話してると 「なんだ、あれ」って、朋樹が口を開ける。 そうか。朋樹は式鬼話した印象しかねーだろうし 皇帝が ジェイドにご執心、ってコト そんなに知らねーんだよなー。 ハティも聞こえてないフリしてるけど、ミカエルが「翼を出させるなよ」と、ボティスに言った。
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