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「何かが邪魔だ。顔を隠してるな?」 ベルゼブブが、眼鏡の奥のワインの眼を細める。 ああ、牛の頭骨被ってたもんな。 ハティがそのことを伝えると 「それを外さないと、吸収出来ない」って 手袋の片手と 無い手首の腕を 広げてみせる。 「だが、奴自身には触れん」 皇帝が言うと 『考え直せ、ゼブル... 』と説得しようとしている 蝿まみれのモロクに、朋樹が式鬼鳥を飛ばして 追突させた。 「シキ使いじゃないか。触れるのか?」 皇帝の興味が朋樹に向く。 「いや掴める訳じゃない。当てれるだけだ」って 若干 引き気味に、朋樹が答えた。 朋樹か謙遜するのって めずらしいよなぁ。 「浅黄ならもっと... 」と言うと 「牛の(めん)を外せば良いのか?」と 浅黄が モロクの顎下から上に 薙刀を払い上げるけど、頭骨の(めん)は上手く外れない。 『... 忠告してやる。面に触れるな』 浅黄が薙刀で、牛の頭骨の(つの)を払って飛ばした。 「よし、顔が出たな」 モロクに這う蝿たちが、頭骨の面があった場所にも 群がって行く。 今、笑った... ? 浅黄が「おお、これは すごいのう」と 傍に落ちた頭骨の面を拾おうと手を伸ばす。 「浅黄、触るな!」と、叫んで走った時に 浅黄の背に、蝿まみれのモロクが飛び付き 腕と脚を巻き付けて張り付く。 『忠告しただろう?』 浅黄の手には もう、面があった。 「まずい」 ベルゼブブが、無い手首に手袋を乗せると 蝿が消えて、白い手袋の手に戻る。 浅黄は 掴める。でも、陽炎には触れない。 朋樹が式鬼鳥を追突させるけど、モロクは離れず 浅黄が陽炎に包まれていく。 皇帝が泰河を引っ張って来て、陽炎に手を突っ込んだ時に、陽炎は消えた。
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