ばんぺいゆ

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ばんぺいゆ は異国の響きを感じさせる名称です。 晩白柚と書く、柑橘系の果物です。 自分にとっては キング オブ 果物 だと断言できます。 なんといっても、あの大きさです。 幼児の頭ほどのみっちりとした質感。 持ってみれば、ため息の出る重さです。 皮の厚さは1,5~2センチ、意外に軟かい ふわふわした内皮、 その中に、大きな房に分かれて みずみずしい果肉が、密度濃く おさまってるわけです。 粒粒とした果肉の味はあくまでもさわやかで 程よい酸味と甘みがあり、ひと房をあっけなく平らげることができます。 さらに特筆すべきはその香です。 玄関に入った途端 存在感を誇示してくるのです。 百合の花は高貴さを感じさせる濃厚な香りで誘いますが 晩白柚のほうが、もっと惹かれます。 なにしろ香りをかげば、その姿を拝みたいと、そういう衝動にかられるのです。 で、香り→姿→触感→姿→持ち上げる→姿 という順に 虜になっているわけです。 大きさでいえば インパクトがあるのは なんといっても 富山県の入善ジャンボ西瓜でしょう。 母が急逝した年の夏に、母の郷里 新潟を訪れ 海岸沿いに 富山に回ったときに巡り合いました。 ラグビーボール型、というより俵型、というべきではないかと…… しかし重さは15~25キロもあるという そういうビッグなお姿。 さん俵という稲わらで作った縄で恭しく包まれています。 彼らがそろって陳列されている景観は 感嘆の声をあげずにいられません。 しかし未だ食したことはなく、味については 残念ながら晩白柚とは比較検討できません。 ジャンボ西瓜は贈答を目的としていると聞きました。 おいしい物に限らず、珍しいもの、驚きに値するものも、 贈り物のひとつとなります。 ワタシも晩白柚を贈ったことがあります。 相手の反応は 「わああああ」 「大きい」 「でも……」 「悪いわあ?」 「食べられるの?」 というように見えました。 同じものを見たり食べたからといって、 自分と同じように感じることはないのです。 当たり前の話ですが、 勘違いすることが多いのが人の世の常なのです。
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