とうもろこし

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とうもろこしは玉蜀黍という漢字をあてる。 単に もろこし といったり、とうきび といったり 「橋のない川」住井すゑ著 では なんば と表現されていた。 主人公の少年はかまどで焼いたなんばを、大地に感謝して食べていた。 とうもろこしは七輪で焼いて、お醤油を塗って食べるのが ベストだと、超ベストだと思う。 ところで七輪は昭和40年代の我が家では、重要な役割があった。 夕飯のメニュウが湯豆腐のとき あるいは休日の昼飯がもんじゃ焼きのときは 食卓の足を折り曲げて、畳ぎりぎりに低く設定しその上に七輪をのせる。 真ん中にどかんと アツアツの七輪が鎮座して そのまわりに、箸と皿や小鉢を持って家族が集まるのだ。 今から考えると異様な光景である。 教祖=シチリン様、みたいな感じで はふはふとまわりで舌鼓を打って 他家でもそうしていたのか、わからないが。 とうもろこしは、七輪に網をのせ、その上で焼く。 明治生まれの父方の祖母はとても器用な人であった。 自分の髪を日本髪に結い、着物を仕立て、 綿を打ち直し、さらに新しい綿を足して布団を作り上げる。 ワタシの七五三の晴れ着は祖母の作品であった。 夜は彼女の作品の掛布団で温まった。 その祖母にとうもろこしの皮で人形を作ってもらったことがある。 とうもろこしの皮の姉様人形。ひげは髪に変化した。やや茶髪。 洋風なお人形は、すぐに くたっとしたけど  おもちゃなどない貧しい家だったので、嬉しかった。 祖母に人形の作り方を教えてもらえばよかった、とつくづく思う。
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