とうもろこし

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とうもろこしを上手に食べるには、下の前歯の動きがコツだ。 小さいときは 芯から取り外すのが下手で 非常に汚い食べ方で、とうもろこしに申し訳ないことをした。 不器用だったので、ほおずきも鳴らすことができなかった。 まず よく熟れた赤いほおずきを、これでもかともみほぐすのだ。 3ミリ径ほどの口から、ワタと種を、取り出す。 すこしでも口が裂けたりしないように、そおっと、する。 腫物をさわるように、気を抜かないで、ゆっくりと、 もみもみと そして あのワタを出すときの快感。 でも、完璧なフォルムにできたものは、記憶では数えるほどしかない。 致命的だったのが、鳴らせないのだ。 口に含み、下の上で上あごで押しつぶすと ぶうう という滑稽な音が出る。 いくら練習しても鳴らせなかった。悔しかった。 海ほおずき という奇妙な物体もあった。 縁日の屋台で売っているものだ。 これも鳴らすつもりで、口に含むのだが 潮の香だけ残し、海ほおずきはふやけてゆき、やがてごみとなる。 「海ほおずきの歌」 田中一郎作詞 山本雅之作曲 では  ♪ 漁師にひろいあげられて きれいにお化粧させられて ♪ という一節がある。   これは、暗喩なのだろうか。どこへ売られていく?  つい、海ほおずきを 女性に重ね合わせてしまうのは、 裏を読みすぎるキャラのせいだろうか。
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