クリスマス・キス

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「まずは、クリスマスでもやるか」  彼は無邪気に笑ってそんなコトを言う。 「え? 何言ってるのよ。何も用意して来なかったよ?」  慌てふためいてあたしが抗議すると、得意気に持っていた袋からイロイロ取り出した。  お菓子、温められてある缶紅茶、……スーパーで買って来たであろう小さなケーキ。  なぜスーパーだと思ったかと言うと……。  2個セットで入れられてて、プラスチックのフォークも2本あったから。  普通のケーキ屋さんで、そういうサービスまでしてる所は、この辺りでは無いからね。 「どうしたの? コレ……! ……すごいじゃない!」  用意の良さに驚きつつ、嬉しさを隠せない。  なんてゲンキンなあたし。  ……そうだ。  待ち合わせ場所に定時に着くよりも、彼へのプレゼント買って来れば良かった……。  小さな後悔が、あたしの中に生まれた。 「まぁまぁ!  金欠病だからさ、スーパーのケーキで我慢な!  ……あ、俺、そのケーキのフタの方に入れて食うから、お前はこっちな」  彼はてきぱきと片方のケーキをフタに置き直し、あたしにフォークを手渡す。  何の飾りっ気もないスーパーのチーズケーキだけど、あたしにとってはすごく美味しく感じた。  これは彼の心がこもってる味なのかな。  あたしを喜ばせてくれようとしてるサプライズ精神……とでもいうのかな。彼の手作りケーキってワケじゃないけど、彼の想いがいっぱい詰まってると思う。
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