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僕は物心がついた頃から、ショッピングモールが大好きだった。お母さんと一緒に連れられて見て回るブランド衣装は、どれも絵本から飛び出した様に華やかだった。
そして小学生に上がると、僕の興味は服からマネキンへと移行して行った。
表情の無い顔が、なぜか神秘的に思えたのだ。
「都築、またそれを見てるの?男の子なのに本当に好きなのね」とお母さんは僕に声をかける。
僕はいつも、この女の子のマネキンを眺めるのが好きだった。色んな衣装に変わるけど、いつも優しそうな顔に見えた。
僕と同じ位の身長だから、十歳くらいかな?
などと想像を膨らませている。
マネキンはどれも同じ顔をしていると言うけど、この子は何処か違う気がしていた。
そんなある日、お母さんとモールまで買い物に出かけた。お父さんのセーターを選ぶのが目的らしい。
「都築、お母さん隣の紳士売り場を見て来るから、ここで待っててよ」と声をかけて来た。
「いいよ。ゆっくり選びなよ」
そして僕はまた、あのマネキンを見に行った。
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