第1章 鏡の中の世界

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しばらくうろうろしていると、「こっちにおいでよ」と声が聞こえた。 え? 僕は周りを見回した。 でも、他に誰も見当たらない。 すると、奥の試着室のカーテンが揺れていた。 僕は何となくカーテンを引いて、その中を覗いた。 「誰もいないよな?」 僕は不思議に思いながら、背を向けた。 するとまた「こっちだよ」と声が聞こえるではないか。 僕は慌てて振り返った。目の前には大きな鏡がある。しかし驚いた事に、その鏡は水の様に波打っていたのだ。 「え?何これ」僕は唾をごくんと飲み込んで、ゆっくりと鏡を触って見た。 何と僕の手は、鏡の中へ入って行くではないか! 「ええ?どうなってんの!」 と、その時、鏡の中から急に手が飛び出して来て、僕の手を掴むや否や鏡の中へ引きずり込んだ。 「わあっ!」 僕の身体は、あっと言う間に鏡の中へと吸い込まれて行ったのだ。
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