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「痛ててっ」僕は腰に手を当てて、尻餅を付いていた。周りはゴツゴツした岩場の様だった。
すると目の前で「ごめんよ引っ張って。大丈夫かい?」と声がした。
僕は慌てて顔を上げた。
そこには、僕と同じくらいの男の子が立っている。
でもその顔と身体は…何とマネキンであった。
茶色の髪の毛、そして服も着ているが、それは紛れもなくマネキンだ!
「ようこそ、マヌカンの世界に。驚いたかい?」
男の子は喋ってはいるが、口元は全く動いていない。無表情なままだ。
「君、喋れるの?」
「勿論だよ。見た目は君達の言うマネキンだけど、このマヌカンではこの通り命があるのさ」
彼は、自分の胸元を小さく叩いた。
「マヌカン?」
「この鏡の中の世界の事さ。僕らは遠い昔から、この世界に住んでいるんだ。でも、人間がここに来るのは初めての事だよ」
僕は夢を見ているのか?
でも、どうして僕が?
すると彼は、僕の頭の中を見透かした様に「外のマネキンは、僕達マヌカンの抜け殻なんだ。そのマネキンの感情を、君は読み取っていた。そんな人間は今まで見た事がない。だから君は、ここに入って来れたんだ」と言った。
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