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「じゃあ聞くけどさ・・・俺が『大学、行きなよ』って言ったら春は迷わずに行けるわけ?」
雛人のその言葉に俺は『それは・・・』と戸惑っていた。
「違うだろ? 迷うだろ? 迷わせるくらいなら俺は何も言わない。何よりも春の考えが何一つ纏まってないのにあーだこーだ俺が言うのは違うと思うし、何よりもそんなの俺が嫌だ。春と変なことになったら面倒臭いし、何よりも俺の言葉に左右されて欲しくないし」
雛人のその言葉に俺は目を閉じた。
どうしていつも雛人はこんなにも素直な言葉を迷えず言えるのだろう?
お世辞でも『頑張れ』と言っておけばいいのに・・・。
そうすれば変なことなど何も思われなくてすむのに・・・。
それを知っていながら雛人はそれをしない。
だからこそ俺はそんな雛人を好きだと思うし、尊敬する。
「俺がもし、何か言えるとしたらそれは春の気持ちがしっかりと固まってからだよ。それまで俺は何も言わない。けど・・・」
そこで雛人は言葉をやめると『よっ!』と言って跳ね起き立って屋上の手すりにもたれ掛かり、サラサラの黒髪を秋風に靡かせていた。
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