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黄昏。
「授業、出ないの?」
屋上の床にゴロリと寝転がり、目を閉じたそいつに俺はそう声を掛け、鳴り響きだしたチャイムの音を聞くつもりはなく聞いていた。
俺のその問い掛けにそいつは目を閉じたままクスリと笑った。
「そう言う春は? 人のこと、言えんの?」
少しの間を置き、薄目を開けて小さな声でそう訊ね返してきた最上 雛人に俺は『確かに』と答えて寝たままの雛人の横に腰を下ろし、肺いっぱいに澄んだ秋の空気を吸い込んだ。
肺いっぱいに吸い込んだ秋の空気は思ったよりも冷たく乾いていて咳き込みそうになったけれど俺はそれをなんとか堪え、目の前に広がる見慣れた景色へと目を馳せた。
「・・・秋・・・だな」
俺はそう呟いて小さな溜め息を吐き出した。
それを雛人はクスリと笑った。
「何? らしくもなく黄昏てんの?」
雛人は嫌味っぽくそう言ってきたけれど起き上がる気配はなくて俺はそれに少し、呆れていた。
「別に黄昏てない。・・・と、思う」
俺はそう言って伸ばしていた足を折り畳んで体育座りになり、立てた両膝の上に顎をちょこんと置いて小さな溜め息を吐き出した。
そんな俺を雛人はクスクスと笑った。
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