プロローグ

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 放課後に部活動の音を遠くに聞くと、どうでもいいことを考えたくなる。  例えば、恋とは何かなんて、そんなこと。  高校生になって周りの人間は恋人を作っている奴が多くなったが、どうみても恋に恋している感じだったり、完全に性行為しか頭になさそうに見えたり、全く持って失礼な話だとは百も承知だが、嘘だろそれでいいのかもっといい男または女がいるだろう目を覚ませ! 周りを見ろ! と言いたくなるような奴だっている。そういう奴らを見ていたからか、どうにも恋というものの有りようがわからず、転じて、誰かを好きになるということが出来ずじまいで、高校の二年間を勉強に没頭するでもなく部活に励むでもなく、かといって手足投げ出してぐうたらするでもなく、なんとなく毎日楽しいと生きてきた気がする。振り返るとどうにも薄っぺらい二年だったように見えてしまうが、まあそれでも悪いものじゃなかったのは確かだ。恋というエッセンスが足されなくても個人的にはいい感じの時間を歩んだのだから、尚更お手上げだ。  他人の恋のことで何やら話が盛り上がってあーだのこーだのいちゃもんつけたり、知りもしないのに相談に乗ったりするのは楽しいのだが、いざ自分にそれを置き換えてみようとなるとどうにも想像がつかない。  ただ、憧れはある。自分も女子と仲睦まじく手なんかつないで何処かに出かけてみたり、写真を撮って思い出を作ってみたり、そのなんだ、まあこれでも健全な男子であるからそういう肉体関係なんかも経験してみたいわけだ。ただ、その全ての前提条件として、誰かを好きにならないと出来ない。割り切って体だけというのは俺には受け入れられないし、告白されたからとりあえず付き合ってみたこともあったが、不思議と友情より上に行くことはなかった。色々と下心的な〝してみたいこと〟はたくさんあったが、それを本当にしたい程の相手かと考えてしまうとどうにも上手くいかない。 「あはははははは!」  やっぱり好きな相手と恋をするのが一番なんだろうが、その好きという感情がどうにもいまいち理解できていないという堂々巡りを繰り返している。
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