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 一日目は方法を考えるついでにすぐに眠れるように夜更かしをして早起きをし、寝不足で望んだおかげでお互い眠ることはできたが、残念ながら失敗に終わった。先に起きてしまったからうららの寝顔をじっと眺めながら一緒に過去に戻れた時のことを思い出して、考えるまでもなく可能性は一つなんだよなぁと、今日を無駄にしたような気分になったが、今日はうららの寝顔を見に来たことにしようと納得した。夏期講習が始まるのが明々後日だから、悠長に構えている場合ではない。さっそく明日試さないと。  そして二日目つまり今日、流石に図書室でこれを試すのはと思い、心を最大限鎮めてうららを家に招いた。最初から家に呼べばよかったのではないかと脳内会議は荒れに荒れたがいきなり家に呼ぶのはハードルが高過ぎたんだ。おかげで今日もしっかり寝不足になれたんだから良しとすることで会議は閉会した。  朝起きて頭の中ですぐさま「俺達は過去に戻るだけ」と何度も言い聞かせ、呪文のように脳内反響させながら駅まで迎えに行き、会った瞬間にその決意はぐらっぐら揺れに揺れた。  うららの私服が眩し過ぎた。  俺はてっきりスエットではないにしろ、だらんとした、パーカーとか男物の短パンみたいなのを履いてくるもんだと想像していたのに、駅前に立っていたうららは紛れもなく女子だった。  フリルのふんわりとしたブルーの膝上スカートに、袖がゆったりとしている白いブラウスのボタンは大胆に開いている。前髪が上げられて髪留めでまとめられている。視線がいつもと違うと思ったら、かかとの高いサンダルを履いている。いつもちゃんと女子としては見ているが、あえて言いたい。女子みたいだ。俺の彼女が超絶美女になって立っている。心なしかそわそわしているようにさえ見える。  バットさえなければ完璧だった。だがバットがあってよかったと安心している。  あれがなかったらガラの悪いのにナンパされていたかもしれない。俺がその現場を見て臆しながらも勇気を出して彼女を連れだす様なタイプの人間だったならまだいいが、いきなりドロップキックをかませる自信がある。勝てる勝てないではなく汚い手で触れてほしくない。藤乃ばあちゃんに気をつけろと言われたばかりなのになんて危険思考だ。こういうところなんだろう。まあ俺が何かする前にあのバットが赤く染まることだろうけど。 「よお」 「おう」 「なんだよお前その格好」
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